極冷OC準備指南 ~壊さないためにやるべき事とは~
最近、極冷OCを始める方が多いのか、Twitter上でセッティングに関する質問を頂く機会が増えた。それもそのはず… 詳しくセッティングについて書かれたページがほとんどないのだ。という事で今回の記事では、ドライアイスや液体窒素を使用しての極冷OCのセッティングに関するイロハを解説したいと思う。
【手順1】マザーボードの防水加工
まず最初に行うべきはマザーボードへの防水加工だ。筆者の経験からいうと、極冷OC中の起動不良や破損事故の原因は、ほとんどが“結露”によるものだ。基板上の細かい実装部品が、結露によって生じた水分でショートしてしまう事で動作不良を引き起こし、最悪の場合パーツが壊れてしまうのだ。これを防ぐためには基板に防水加工を施し、物理的に水分が触れないようにするしかない。
方法としては、ワセリンや紙テープを使った簡易的な方法から、防水塗料を使った本格的な方法まで様々な手法が存在する。その他には、練り消しや紙粘土、お米を使った手法まで存在する。
最もお手軽なのは基板にワセリンを塗る方法だが、ホコリなどのゴミが付着しやすくなるという弱点がある。ホコリが原因でショートして起動不良になるといったトラブルが発生する場合があるので、あまりお勧め出来ない。なので、筆者は絶縁塗料を使用したコーティングを推奨している。そう、ASRockのOC Formulaシリーズで採用されていた、クラムチャウダーをこぼしても大丈夫というヤツだ(笑)
筆者は基板のコーティングには、Plastidipというゴムコーティング剤やサンハヤトのハヤコート MARK2を使用する。これらには絶縁性があるだけでなく、基板や実装部品を腐食から守る効果もあるので、基板が湿る事の多い極冷OCに最適なのだ。
そのまま基板をコーティングすると、スロットやコネクタ類が使えなくなるので、テープを使ってマスキングを行う必要がある。基板全体をコーティングするためにヒートシンクやソケットの金具を取り外すのも忘れずに!筆者はいつも、ソケットの部分はCPUを取り付けた状態でマスキングをしている
コーティング後の基板裏はこんな感じになっている。R.O.G.系のマザーやMSIのOCマザーはソケット裏に温度測定用の穴が開いている場合がある。ここを塞がないと、零下での動作が不安定になる場合があるので、基板裏からの温度測定を行わない場合は練り消しなどで塞いでしまおう。
【手順2】ポットの取り付けと養生の仕上げ
次にポットの取り付けとそれに付随する作業を解説したいと思う。所々、撮影の邪魔をする方々が写り込んでいるが気にしないでほしい…(笑)
ポットの取り付け前に、使わないスロットやコネクタ、ソケットの周りなどを紙テープで養生しよう。これは水滴などが侵入するのを防ぐためだ。コーティング済みではあるが、基板裏とポットのリテンションの間にペーパータオルを挟むのを忘れずに。基板裏は意外にも湿りやすい場所なので注意してほしい。
リテンションを装着してからペーパータオルでソケットの周りを養生する。空気が入り込まないように隙間なく積層するのがポイントだ。写真のようにペーパータオルに穴を開けて付けるといいだろう。
ポットのズレを防ぐために、ポットの底面に合わせて切り抜いたスポンジシートを装着する。ポットの底面が暖かい空気と触れていると温度差でグリスが割れやすくなるので、それを防ぐという意味合いもある。-196℃まで冷やす場合は、このスポンジシートの有無が結果を左右する事もある。ここテストに出ます!
ポットが設置出来たら、最後にタオルを巻いて輪ゴムで止めよう。タオルを巻く事でポットの保温効果が期待出来る上に、水滴が付かなくなるのでトラブル防止の面でも効果がある。自分のフェイバリットカラーでクールに決めよう!
今回は割愛させて頂いたが、グリスの塗り方は Thermal Grizzlyの記事内(https://www.ark-pc.co.jp/news/article?id=300159 )で解説させて頂いているので、そちらを参考にして頂きたい。冷やし始める前に、ポットをガストーチやドライヤーで加熱してグリスを馴染ませるとなおよしだ!ない場合は、定格で立ち上げて、CPUの発熱でポットを加熱してグリスを馴染ませよう。
今回の記事はここでおしまい。とにかく僕が伝えたいのは、“1,000円のコーティング剤が数万円のパーツを救う”という事だ。コーティングでマザーやビデオカードはお嫁に行けない仕様になってしまうが、事故の確率はグンと低くなる。パーツを壊すことなく極冷OCを楽しみたいのならば、今回の記事を参考にコーティングにチャレンジしてみてほしい。
今回のシミオシ(清水イチオシの略)
極冷セッティング記事で何を推すよ… という感じだが、極冷OCでの相棒とも言えるグリスを推しておこうと思う。
クマーのマークでお馴染みの、ドイツのThermal Grizzly社製のハイエンドグリス。熱伝導率が12.5W/m・kと高い事に加えて零下でのクラックに強いので、多くのエクストリームオーバークロッカーが愛用している。極冷向けと謳われてはいるが、空水冷でも高いパフォーマンスを発揮するので、環境を問わずにオススメな逸品だ。