
これからのスタンダード「TLC NAND」採用2.5インチSSD4選 - まとめ
2015年年末商戦にかけメーカー各社が次期主力として開発されていた「TLC」NAND採用SSDが続々と登場、今までの「MLC」NANDとはどう違いどう変わっていくのか、今回はSSDのキーパーツとなるNANDフラッシュを製造する半導体メーカーがもつ自社ブランドの「TLC」NAND採用SSDをフォーカス、特色、比較をざっくりとまとめてみた。
SLCからMLCへ、そしてMLCからTLCへ移行が始まったSSD

「SLC」、「MLC」、「TLC」はSSDがデータを格納するNAND型フラッシュメモリへの記録方式、ざっくりいうとSLCは1つのセルに1bit、MLCは2bit、TLCは3bitのデータを記録するため、TLCは先の2つの方式よりも同じサイズの記憶領域により多くのデータが収納できる優れた方式なのだ。
TLCのデメリット
メリットだけ見れば何故もっと早く採用しなかったのかという話だが、もちろんデメリットもある。 ざっくり言ってしまえば同じ物理エリアに数倍のデータを記録すればそれだけその場所に対しアクセス回数が増えてしまい結果的に寿命が短くなる所だ。
ただそれはSLCからMLCへの移行時にも言われていた課題だったか今のSLCとMLCの状況をみれば今回の移行においてもTLC NANDの実用性、耐久性は既に確立済みと考えてよいだろう、もう一つは速度だがこれも技術の進化でカバーしてきている。。
となればMLCからTLCへの移行は「アリ」と考え、まずはTLC採用SSDの中からNAND FLASHを製造しているメーカー直ブランドの4シリーズに限定してフォーカスしてみたい。
ちなみにここまででちょっと気になる、引っかかるという場合はMLC採用モデルもまだ入手可能なタイミングなのでMLC NAND採用SSDを選択するほうが懸命かもしれない(新技術は2世代目以降、OSはSP1以降が安定期といいますし…。)
エントリークラスの基本性能はほぼ横並び
250GBクラスのモデルを基準に各社基本スペックを比較してみる。

シリーズ | SL301 | BX200 | UltraII | 850Evo |
---|---|---|---|---|
容量 | 250GB | 250GB | 240GB | 250GB |
方式 | TLC | TLC | TLC | 3bit MLC(TLC) |
NAND | SKhynix 16nm | Micron 16nm | SanDisk 19nm | Samsung 3D V-NAND |
コントローラ | SKhynix | SiliconMotion | Marvell | MGX |
キャッシュ | 搭載 | 搭載 | nCache 2.0(512MB) | 512MB |
連続読出 | 540MB/s | 540MB/s | 550MB/s | 540MB/s |
連続書込 | 470MB/s | 490MB/s | 500MB/s | 520MB/s |
ランダム読出 | 95000IOPS | 66000IOPS | 91000IOPS | 97000IOPS |
ランダム書込 | 85000IOPS | 78000IOPS | 83000IOPS | 88000IOPS |
Active時消費電力 | 最大3.0W | 最大3.3W | 最大4.4W | |
寿命 | 120万時間 | 150万時間 | 175万時間 | 150万時間 |
保証期間 | 3年間 | 3年間 | 3年間 | 5年間 or 75TBW |
接戦といえどこうして並べてみると各半導体メーカーのポリシーというか基本前提的なものが浮き出てくるのが面白い。
SanDiskは信頼性を、Crucialは総合バランス、SKhynixはコスパ、Samsungは独自性などそれぞれ特徴が数値に表れている。
Crucial 「BX200」シリーズ
Crucialは以前はMicronのセカンドブランド扱いだったがここ数年、Micron製品採用自社ブランドとしてブランディングを行い認知度が高まっている、SSDでは早い段階から製品を開発投入している分、独自機能などアドバンテージも多い、BX200はエントリークラスのSSDとしてのパフォーマンスは十分だと考えシリーズTLC初実装という事も踏まえ耐久性、対寿命にフォーカスした製品となっている。
価格、速度、寿命延命対策などバランスで考えるとCrucial BX200シリーズは有力候補の一つ。
BX200の特筆ポイント
- データ移行ツールAcronis® True Image™ HD(Act Keyが付属)
- ライブ監視とメンテナンスツールCrucial®Storage Executive対応
- 9.5 mm厚用変換スペーサー付属
- SLC Write Acceleration機能搭載
- Multistep Data Integrityアルゴリズム実装

Crucial(クルーシャル)について
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San Disk 「ULTRA II」シリーズ
SanDiskはアメリカ最大のNAND製造メーカー、2015年の10月に同じくアメリカのHDDメーカー、WesternDigitalに買収される事が決まっているがコンパクトフラッシュやSDカードのカメラ用として高品質、高性能、高耐久性な製品を開発、製造しているメーカー。
ULTRA IIシリーズは採用NANDのプロセスルールが単純数値では遅れているがざっくり言ってしまえばそこまでの差はなく、キッチリ仕上げてきている。
信頼性重視であればSanDisk UltraIIシリーズが有力候補。
UltraIIシリーズの特筆ポイント
- nCache™ 2.0テクノロジー実装
- SSDモニタツール「SSD Dashboard」対応(フリーダウンロード)
■ULTRAIIシリーズは2016年1月にマイナーチェンジが行われ更に省電力化されている(参照記事)
■従来モデルも一部併売している。

SanDisk(サンディスク)について
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Samsung EVOシリーズ
Samsung 850EVOシリーズは豊富な容量別ラインナップ、そして他社にはない2TBの大容量タイプなど独自の製造技術「3D V-NAND」を搭載することで実現している。 Samsungは半導体シェア世界No1を長年キープしておりその割合はかなり高く抜きに出ている。
850Evoはモデル毎にスペックが異なるため、容量別に信頼性、パフォーマンスが変わってくるがV-NANDテクノロジー搭載SSDを使ってみたいのであればSamsung 1択となる。
850EVOシリーズ特筆ポイント
- ターボライトテクノロジ搭載
- RAPIDモード搭載

SAMSUNG(サムスン)について
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SKhynix 「SL300」シリーズ
SKhynixは業界3位の座をMicronと競っている上位メーカーのひとつ、SSDでは若干出遅れてMLC世代から市場に参入、最近ではコスパを前面に押し出し露出するようになってきている。
そういった中TLC採用の「SL300」には注力しており、早い段階で低価格で市場に投入し注目度は高い。

SKhynix(エスケーハイニクス)について
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TLC NAND採用SSD まとめ
アークテックニュース編集部内での評価は以下の通りとなった。
信頼性、寿命への対策、今までの実績などを総合的に考えた場合
SanDisk ULTRAII > Crucial BX200 > Samsung 850EVO > SKhynix SL300
となり、コストパフォーマンス※で考えた場合
SKhynix SL300 > Crucial BX200 > Samsung 850EVO > SanDisk ULTRAII
一応順番で並べてみたものの基本的にTLC NAND採用エントリークラスのSSDは少なくとも250GBクラスでは体感できる程の差はなく、価格差も少ない事から少なくとも半導体製造メーカー自社ブランドSSD内においては、その時にお買い得なモデルを選ぶか一番耐久性、寿命に注力しているモデルのどちらかを選ぶのが良いという結論に至った。
2015年冬の時点で大げさに言ってしまえば未知なる物への挑戦とも言えるTLC NANDタイプのSSD、しかし兆戦なく進化は起こり得ず、少なくともメーカー保証もある物なので思い切って踏み出してみたいアイテムではないだろうか。
※アークオンラインストア 12/11現在の価格で算出。