ロゴも一新したZOWIE GEAR。

左右対称マウスの定番の一角を担っている「FK」シリーズが復活し、 次は右手専用マウス「EC」シリーズが復活してくれた。 私自身長く愛用しているマウスなだけに、今回のリニューアルに関しては大いに喜んでいる。

この際、旧モデルが生産終了する時に中の人から「後継機は形状も変わるらしい」と言った情報を聞いて、 旧「EC1」をストック用に2個ほど購入してしまっているのは無かった事にしよう……。

ファーストインプレッション

ファーストインプレッション、というがそもそも形状は変わっていないので言う事も少ない。ただ、Logicool Gのマウス「G500」のように後継機(厳密には違うのだが)の形状が丸っきり違ってしまい、旧モデルを愛用しているユーザーが買い替えに悩んでいるのを良く見かけるので、形状が変わっていない事にある種の安堵感すら感じられる。

人間工学(エルゴノミクス)に適った右手専用設計。古くは名作マウス「Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0」が採用していた定番の形状であり、他社メーカーからもこの「定番」を踏襲しつつ、オリジナリティを出そうと画策している。その点「ZOWIE GEAR」は逆であり、忠実に「定番」を守っているのが好印象である。これを「パクリ」だと言われないのは、初代「EC」を作る際に開発に元プロゲーマーであり、伝説的なFPSプレイヤーであるHeatoN氏の監修を受けている、というのが大きいだろう。幾多の大会で優勝経験を持つ実績のあるプレイヤーが「これがベストだ!」と言っているのだから、その説得力たるや絶大なものである。

余談だが、今は無き「DHARMA POINT」が製品を作る際、日本での著名なFPSゲーマーから意見を取り入れた話があるが、製作秘話の記事を読んでいると、やはり多くのプレイヤー達が「IE3.0」の名前を出している事から、どれだけ根強く支持され、また愛されていた「定番」なのかが良く分かるだろう。

マイナーチェンジ - 何が変わっているのか

途中から何だか話が逸れてしまったので、改めてマウスについての話に戻そう。

それでは何が違うのか、というとFKシリーズに採用されている「Avago 3310」センサーだろう。NEW「FK」シリーズでも高い追従性を見せ、実績もあるセンサーへの移行は当然喜ばしい。またDPI設定も従来の450/1150/2300から、400/800/1600/3200の4段階に変更されているのもハイセンシユーザーにとっては有難い変更点だろう。 切り替え数的にも数値的にも少ないDPI設定に不満を感じているユーザーが多かったので 「ZOWIE GEAR」がちゃんとユーザーの声を聞き、取り入れてくれているのだと感じられる。ただし、旧モデルからの買い買える人は設定値にズレがあるので、その誤差を修正する為に設定を今一度見直す必要があるだろう。

コーティング素材も変更しており、同じくNEW「FK」シリーズ同様のツルツルサラサラとしている。ただ、これに関しては個人的に意見の分かれる所ではあるかな、と思っている。旧モデルは感触的に「しっとり」していて乾いた手で持っても吸い付くようになっており、あまり手汗をかかない、むしろ乾燥気味な私としては旧モデルの方が好ましく感じられる。

従来のモデルのマイナーチェンジ販売は既に「Razer Deathadder」シリーズなどが実践しており、軒並み高評価を得ており、お店でもコンスタントに売れている。 やはり使い慣れたマウスが生産終了してしまい、もう手に入らなってしまうという事はコアなゲーマーたちにとっては死活問題になる。発売が決定した際の「ZOWIE GEAR」のCEO「Vincent Tang」氏のコメントの中に「ユーザーからの要望が多かった為」とあるのもその証拠だろう。

ドライバーレス、 という強み

スペック的にもゲームをするのに十分であり、ドライバーレスで動くZOWIE GEARの製品。他製品のようにドライバーを入れて設定して、と言った手間を必要としないのでドライバーレスはゲーミングマウスの入門用としては最適である。熟練者にとってもFPS等のゲームではほとんど使う事が無いマクロなど不必要であり、PCとゲーム内でのセンシビリティの設定を覚えておくだけで、どのPCでも同じような操作が可能になる。

マクロがある方が便利、という人にとってはあまり魅力的には映らないのは、FPSやMOBAなどの操作性や即応性を重視するゲームをプレイしているコアゲーマーと、MMOなどのいわゆる利便性を重視するプレイヤーとの違いであり、メーカー側の狙っている層の違いにもなってしまう。ユーザーも根本的に重要視している部分の違いでもあるので、MMORPGなどでプレイしていて且つ「EC1-A」の購入を検討しているユーザーは、ある程度の不便さは仕方が無いと割り切らないと難しいだろう。

また、日本でも最近増えつつあるオフラインイベントにも「ZOWIE GEAR」製品が有効である点も推したい。イベント会場となる場所の多くはネットカフェなどではあるが、あの手のお店では再起動してしまうとインストールしたものが初期化される場合が多い。「ZOWIE GEAR」の製品であれば、思う存分使い慣れたマウスで戦う事が出来るだろう。

コストパフォーマンスの改善

さて、ここまで書いて特に不満らしい不満が無いのだが、実は特大の不満が一つだけある。表題の通りコストパフォーマンスが非常に悪いのである。アークでの販売価格は7,900円。これは一般的なゲーミングマウスの価格帯としては少し高めである。右手用マウスの定番である「Razer Deathadder 2013」は5,780円、「Steelseries Rival」は5,954円と約2,000円ほどの価格差になってしまう。その上利点であるはずのドライバーレスも、悪く言ってしまえば多機能性では劣っている事になる。

「IE3.0」が人気を博した理由の一つに販売価格4,000円前後というコストパフォーマンスの良さがある。しかしこれは復刻版での価格であり、初期モデルの発売当初の価格は7,000円以上したので、一概に人気の秘訣=価格という訳では無いのだが……。 言ってしまえば「EC-A」シリーズはマイナーチェンジであり、復刻版に近い物では無いのだろうか。

流石に開発に関しては素人であり、内情を知る事が出来ない私では考え付かない理由があるのだろう。マウスの『型』は流用しているはずなので『型』の製作費用分は安くは出来るんじゃないのか、とか。果たして今回導入された最新のセンサーなどは、その浮いた費用分で賄えないほどコストが高いのか、とか。

性能的にも他社製品に引けを取らないだけに、是非とも価格面でも他社製品の中に切り込んで欲しいと思う。

総評

全体的に高水準のスペックを有しており、ドライバーレスでイベントにも持って行きやすい。近年盛り上がりを見せる日本国内のe-Sportsの波に上手く乗れる製品だと思っている。私の経験からの判断になってしまうが、現行の中で形状・大きさ共に一番「IE3.0」に近いマウスであるので、往年のゲーマーで「IE3.0」を好んで使っていたゲーマーに非常にオススメ出来る。「IE3.0」が大き過ぎる、という方にも小型の「EC2-A」という選択肢があるのも有難い。

ただ、やはりコストの関係で中々手が難いのが現状である。上記で入門者にオススメと書いたが、逆に今までゲーミングマウスを知らない人間からすれば、マウス1個で7,000円というのは驚愕するだろう。実際にお店で接客していても価格を見て購入を控える方が多いのも事実だ。また、国内ゲーマーの大半を占める学生にとっても、2,000円の差は大きな判断材料となるだろう。