今回は大物のキーボードレビューという事ですが、受け取った製品は『ROCCAT Ryos TKL Pro』。一瞥して普通のキーボードでは無さそうだと分かるが、果たして無事にレビューし切れるのか……。この大きな製品を手に私は、一抹の不安を抱えつつ帰路についたのでした。

今回も私の独断と偏見によるレビューとなっております。使用感や製品に対しての考察などを主軸にした内容となっていますので、もしこれを読んで気になった方は、是非とも某Gamerサイト等にて仕様などを確認してみて下さい。

ファーストインプレッション

さてさて、キーボードと言えば横長の物である。かつては大手メーカーであるLogicoolやMicrosoftからも、キー配列の非常に変わったキーボードや、端が丸みを帯びた形状のキーボード等も発売されていたが、それでも『横長』というイメージからは離れていないものだった。

それを踏まえて今回の製品「Ryos TKL Pro」を見てみると、下手したら『四角形』に見えてしまう。その要因としては一目瞭然だが、下部に大きく出ているパームレストにある。パームレストが付いたキーボード製品は数あれど、ここまで四角形に近い印象を受ける物は、少なくとも私の中ではそうは無い。その原因としては見た通りのものだが、この製品の売りの一つでもある『テンキーレス』だ。

   

テンキーレス+大き目のパームレスト。

この組み合わせが他社製品に比べて四角形だと思わせる要因となっている。

『テンキーレス』の用途と『マクロキー』の利便性 両立は可能なのか

一般的な事務用途では数字の入力が多々あるので、あまり使われる事は無いであろうテンキーレスキーボード。利点としては小さい事による設置場所の自由度を増す事がある。 会社でのデスクはもちろん、PC周りが狭い場合は設置場所の自由度が極端に狭くなってしまうもの。それを解消する為にテンキーレスを求める人は、そんなに少なく無い筈だ。

しかし、私の環境の場合はモニタとデスク端の距離があまり空いていない。設置しようとするとキーボードの端っこが若干だが宙に浮いた形になってしまう。この状態で使おうものなら、タイピングの最中にキーボードがガクガクと動いて、とてもゲームを遊べるような状態では無い。

「ROCCAT Ryos TKL Pro」は同社製品の「ROCCAT Ryos MK Pro」のテンキーレスモデルである。テンキーレスの他にもキーボード左側に一列配置されていた[M1]~[M5]キーも撤去され、横幅をかなり短くしている。本来であれば専用アプリから各種[M]キーに様々な機能やキーマクロを設定しておける、というのが強みである本製品の大部分を切り離して、テンキーレスの良さである短さを重視した判断は非常に好感が持てる。
……好感が持てるだけに何故パームレストの部分には何も手を加えず、そのままにしてしまったのかという気持ちにもなってしまう。

[Space]キーの手前側に「Thumbster key」(サムスターキー)と呼ばれる、カスタマイズ可能なボタンは撤去されずにそのまま残されている。モデルとして最上位のキーボードである為か"ただのテンキーレスキーボード"では終わらせない工夫なのだろう。 しかし最初に述べた通り、テンキーレスを求める人の多くは利便性をある程度切り捨ててでもスペースの確保を優先したい、もしくは優先せざるを得ないような人が求める物だと思っている。(HHKB(Happy Hacking Keyboard)のような快適な打感を重視した結果、小型キーボードを使用しているゲーマーも多いが……。)

その面から考えると本製品は利便性を求めつつ省スペース化という、両立に挑戦した意欲作だとは思う。しかしパームレストを取り外せるようにしたり、Windowsキー等を撤去してカスタマイズキーの場所を変更するなど、何かしら工夫出来そうな事がありそうなだけに、まだまだ全体的に詰めきれていない印象が拭えない。

使用感は良好 優れた製品である事に間違いは無い

ここまで長々と書いていて、実は形状の事しか書いていなかったのでキーボードとしての部分に目を向けて見る。

軸は定番のCherry製MXスイッチの赤軸モデル。押し込みが軽く、スムーズなタイピングがし易くゲーマーにも好かれている。ボイスチャットを頻繁に利用する私にとって、カチカチと押し込み時に音が鳴る青軸では、友人たちから「うるさい!」と怒鳴られないで済むのは非常に有難い。

LEDも最近の絢爛豪華に彩られた製品が多い中では、比較的に見ても控えめである。 最上部一列「Fキー」と、一般的にゲームで良く使われる「WASD」キー、カーソルキーが常時光っているのみである。反面地味過ぎるかと思いきや、タイピング時には入力したキーのLEDが数秒光るという演出もあり、見た目にも面白く格好良い。
また専用のドライバーを入れる事で、LEDで光らせるキーの設定が出来たり、 押した時のエフェクトも波紋のような物に変更出来たりと自分の好きなようにLEDの調整が出来る。LEDが不要な人はあえて消す選択肢も残っているだろう。

しかし[Space]キーの手前側にある「Thumbster key」(サムスターキー)は、キーというよりは完全に"ボタン"である。赤軸キーを気持ち良く押せるだけに、こちらのキーがより一層重く硬く感じられてしまう。押す時も「カッコン」という硬い音が鳴るので感触、聴覚合わせて「硬い」というイメージが強まってしまう。ゲームの最中に咄嗟に押すのは、中々難しいだろう。デフォルトでは「ドライバーアプリを起動する「プロフィールを変更する」などが設定されているので、それに習ってゲームの起動を組み込んで置けば、ボタン一つで手軽にゲームの起動が可能となる。そう言う意味ではゲーム中に誤爆する事がほぼ無いであろうこの硬さも便利に感じる、かも知れない。

まとめ 工夫と環境次第

良く言えばテンキーレスでありながらマクロキーもあるので利便性や柔軟性を有した高性能キーボード。悪く言えばそれらを両立しようとして、結局どっち付かずになってしまった、ただ高価なキーボード。

環境さえ整えてしまえば、テンキーレスの省スペースや配置の自由度を味わいつつ、マクロの快適さも一緒に味わえるので、この製品を買われる際には、打感だけでなく自身の環境に適しているかどうかが重要になると思う。環境の融通を効かせる為のテンキーレスキーボードなのに、環境を整えないと十分に真価を発揮できないのは、本末転倒な気もするが、何はともあれPCデスクなどでキーボード周辺、特に奥行きに余裕があるのであれば、この高性能テンキーレスキーボードを採用するのに一考の余地は十分にあり得るだろう。