プロが教える当たりCPUの見分け方!
プロオーバークロッカーはOCせずに当たりCPUを見分けるって本当?!
実は短時間でCPUが当たりかを見分ける方法が存在するのだ…
あのオーバークロッカー清水氏がその方法をレクチャーするぞ!
CPUの定格電圧“VID”って知ってる?
今回のお題はズバリ「CPUの個体差」だ。
同じCPUであっても、発熱の具合やOCの伸びには個体差があり、様々な個体が存在する。それ故に「当たりCPU」を求めて、CPUを何個も買う人がいるのだ…(僕を含めて)
実際にOCして当たりかどうかを見極めればいいのだが、大量のCPUをテストする場合は時間が掛かり過ぎてしまうので現実的ではない。そこで有効になるのが、CPUの定格電圧である「VID」をチェックしての判断方法だ。
CPUには、VID(Voltage Identification Definition)という、各々の個体が定格クロックで動作するのに必要な電圧がインプットされている。「VIDの値が低い=定格クロックを低電圧で達成」という事を意味し、電圧を入れる余裕が残されている分、OCが伸びやすい傾向にある。すなわち、「VIDが低い=良いCPU」という図式が成り立つのだ。
VIDのチェック方法は簡単で、CMOSクリアしてからUEFIに入ってハードウェアモニター欄からCPU電圧を確認するだけでOK。CMOSクリアするとCPUは定格クロックで起動してくるので、定格動作時の電圧が表示されるという訳だ。
「Z170 OC Formula」でVIDを表示させたのが下記の画像だ。
赤枠の1.248Vと表示されているのがCPUのVIDだ。CPU電圧の名称はメーカーによって違うが、「CPU Core Voltage」や「CPU/CACHE Voltage」などと表示されている場合が多い。
Core i7-4770Kだと1.001V以下、Core i7-4790Kだと1.056V以下が当たりと言われていて、Core i7-5960Xは0.928V以下が当たりと言われている。気になるSkylakeはと言うと、Core i7-6700Kの当たりは僕の経験上では1.280V以下に多い気がする。
SkylakeだけVIDが高いのは、CPUコアとリングバスの電圧が統合された事によって、CPUコアよりもVIDの高いリングバスのVIDが表示されているのが原因だ。純粋にCPUコアのVIDを知る事が出来なくなったので、Haswell系と比べるとVIDの値はあてにならなくなっている。
CPUの個体差によるOC耐性の違いをテスト
今回はCore i7-6700Kを3個用意して、VIDの値がOC耐性にどのような影響を及ぼすのかをテストした。
使用したベンチマークは「CINEBENCH R15」で、CPUクロックを4GHzから4.9GHzまで100MHz刻みで設定し、マルチスレッドテストが完走する最低電圧を求めた。設定したのはCPUクロックとCPU電圧のみで、リングバスのクロックやその他の電圧は全てAUTOにしている。
【検証環境】 | |
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CPU | Intel Core i7-6700K(4C8T、4.0GHz) |
マザー | ASRock Z170 OC Formula(Z170、ATX) |
メモリ | CORSAIR CMD16GX4M4B3000C15(DDR4-3000、4GB×2枚で使用) |
ビデオカード | GALAX Galaxy Fish(GT 630、1GB) |
電源 | CoolerMaster V1200 PLATINUM(1200W、80+PLUS Platinum) |
ストレージ | PLEXTOR M6S 256GB(SATA3、256GB) |
CPUクーラー | CORSAIR H110i(280mmラジエータ簡易水冷、14cm角ファン×2) |
室温 | 23℃ |
結果は一目瞭然で、VIDが最も低い1号がほぼ全域で圧勝。クロックが上がるにつれて要求電圧の差は開いていき、4.9GHz時には1号と3号の差は0.12Vにまで広がっている。
4GHz時に1号が最も低い電圧を達成出来なかったのは、おそらくリングバスの最低動作電圧が2号よりも高いからだと思われる。
VIDがともに1.280Vの2号と3号だが、OC耐性に差がある点に注目してほしい。これは前述した「CPUコアとリングバスのVID」の違いが影響しているからだと思われる。2号の方が低電圧でクロックが伸びたのは、3号よりもコアのVIDが低いからに違いない。
テスト結果をまとめると、VID 1.248Vの1号が最も好成績をマークした事から「VIDが低い=良いCPU」と言える。しかし、VIDの表示が同じ個体でも、隠れているCPUコアのVIDは違うので、2号と3号が教えてくれたようにOC耐性には開きが出てしまうのだ。
ちなみに海外のオーバークロッカーの話だが、VID 1.32VのCPUを全く期待せずにテストしたところ、コアが超当たりだったためCINEBENCH R15が5GHzで通ったという事例もあるので、VIDが高いからといってハズレと断言する事は出来ない。
リングバスのクロックを上げるとコアのクロックが伸びなくなる個体も多いので、まずはリングバスのクロックは定格のままで、コアだけのOC耐性をチェックしてみて欲しい。
最後にSkylakeのOCのコツをひとつ!
「Skylakeは熱い」という話をよく聞くが、リングバスのVIDに合わせてCPU電圧が高く設定されているので、発熱の原因が高過ぎるCPU電圧にある場合も多い。動作クロックは定格のままでCPU電圧を下げると発熱がかなり減るので、殻割りをする前に電圧の調整にも挑戦してみて欲しい。
それではみなさん、良いOCを!
今回のシミオシ(清水イチオシの略)
さあ、勝手に清水的イチオシ商品を紹介するコーナーの始まりだ。今回はマザーボードとグリスを紹介したいと思う。
オーバークロックに特化して開発されたマザーボード、OC FormulaシリーズのインテルZ170チップセットモデル。ASRock専任オーバークロックマスターNick Shih氏が開発に参加。オーバークロックに必要な要素へのこだわりが随所に散りばめられています。
【清水コメント】 元OC世界チャンプの“NickShih”が監修しているASRockのOC特化型マザーボード。ベンチマークでハイスコア得るためのキーとも言えるメモリのOCが得意な製品で、発売以来多くの世界記録を樹立している。CPUのクロックが伸びやすい上に、メモリを高クロック低レイテンシで動作させられるので、ハイスコアを狙いたい人に是非とも試してもらいたい1枚だ。
【清水コメント】 ドイツのThermal Grizzly社製の高性能グリス。OCのために開発されたというだけあり、熱伝導率が12.5W/m・kと高いのが特徴。熱を加えると良く伸びるので、ヒートスプレッダをドライヤーで加熱してから塗布すればとても塗り易い。極冷向けと謳われているが、空水冷でも高いパフォーマンスを発揮する逸品だ。塗り易さを重視するのならば、兄弟製品の「Hydronaut:https://www.ark-pc.co.jp/i/10500174/」もお勧めだ。
(清水 貴裕)