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パフォーマンスリカバリーモードで4枚挿し5600MHz動作も、Ryzen7000シリーズに対応するJEDEC仕様のDDR5-5600メモリー「ADATA AD5U560016G-DT」レビュー

2022年9月にADATAから他社に先駆け発売された次世代intel AMDプラットフォームに対応するJEDEC SPD仕様のDDR5-5600(PC5-44800) 16GBモジュール2枚組32GBメモリーキット「AD5U560016G-DT」をRyzen7000公式スペック通りに認識、使用出来るか、また、DDR5-5600 4枚差し設定が可能な新パフォーマンスリカバリーprofile設定も負荷テストまでをアークスタッフが簡易的ながら検証を行いレビューにまとめてみた。

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公開日: 2022-10-06 (更新 2022-10-12)
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「ADATA AD5U560016G-DT」をRzyen 7000シリーズで試す

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2022年9月9日(金)に販売を開始しているDDR5の次世代JEDECスペック5600MT/sに対応する「ADATA AD5U560016G-DT」を検証する機会があったので、パッケージシールに貼られた通りAMD初のDDR5対応Zen4アーキテクチャ採用Ryzen 7000シリーズとAMD 600シリーズマザーボードできちんと認識、動作するのかなど簡易的ながら検証してみた。

製品仕様・特長

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「AD5U560016G-DT」は初のJEDEC SPDタイプのDDR5-5600メモリーキット

2022年下半期~2023年初頭にかけAMD Zen4アーキテクチャ採用のRyzen 7000シリーズやRaptor LakeベースのIntel 13世代コアプロセッサーなどの投入で、より普及が進むことが見込まれているパソコン用DDR5メモリー。 ただしAMDでDDR5-5200、intelでDDR5-5600を要求してきており、現在のJEDEC SPD標準スペックのメモリー速度も4800MT/sから5600MT/sへ一段上へ移行が始まっている。

しかし2022年10月5日現在、DRAMメーカーは基準となるDDR5-5600ネイティブDRAMを搭載した純正モジュールを投入できておらずスケジュールが間に合っていない状況。

そんな中、この製品はネイティブDDR5-4800 DRAM(本レビュー時の個体はSamsung BダイK4RAH086VB-BCQKが実装)をベースにADATAの独自ソーティングによる定格1.1volt DDR5-5600 CL46-45-45で選別したDRAMを採用する事で、他社に先駆け次世代DDR5 JEDECスペックと同等な製品に仕上げ、いち早く市場投入を開始している。

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【製品仕様・詳細】

  • メーカー:ADATA
  • 型番:AD5U560016G-DT
  • メモリータイプ:288Pin DDR5 DIMM
  • バッファ/ECC:Unbuffered non-ECC
  • メモリープロファイルタイプ:SPD
  • メモリー速度:DDR5-5600(PC5-44800)
  • レーテンシ:CL46-45-45
  • 電圧:1.1Volt
  • 合計メモリー容量:32GB(16GBモジュール x2枚セット)
  • 構成(1枚辺り):1RANK 8チップ / 16Gb DRAM (2048Mx8)
  • モジュール:JEDEC準拠
  • カラー:黒(ブラック)
  • 保証期間:限定ライフタイム保証

ここまでの説明で、まず?となりそうなのがJEDEC準拠の5600MHz対応メモリーなのに4800MHzのDRAMを使っている点、これって結局オーバークロックメモリなのでは?と、思われる人もいると思うがその考えはあながち間違えてはいない。

DRAMメーカーが規定した速度以上で使う場合は間違いなく「オーバークロック動作」になるが、本製品が一般的に言う選別OCメモリーと異なるのがその設定が「JEDEC準拠の5600MHzメモリーのSPD値」になっている点で、実態的な面では選別時の電圧が定格の1.1Voltである事がポイントになってくる。

XMPやEXPOではメモリー電圧も制御できるが、SPDパラメーターは基本的に電圧の設定項目が無いため、規格通り1.1Voltの定格電圧で起動する事になる、その為、JEDEC SPD準拠のメモリーとして販売する為には一般的な選別OC品の様に電圧を上げる事で耐性を引き上げる事は出来ない為、よりシビアな選別検査が必要となる。

更に言ってしまえばSamsungは現在量産中のBダイをそのままDDR5-5600まで引き上げ運用する見込みで、そういった意味では今回発売された製品との違いは製造メーカーであるSamsungが選別し5600MHzの製品として刻印したものが「ネイティブ」になり、「ADATA」が選別したものは「オーバークロック品」となる、つまり選別した元によりOCかネイティブがが変わる事以外は実質的には変わらない事になる。 つまりモジュールへのアッセンブリメーカーであるADATAの選別が、DRAM製造メーカーであるSamsung自身の選別よりもマージンを含めた信頼性がどこまであるかが最終的に重要になってくるがとりあえず今回は、JEDEC SPDのメモリーの動作テストなのでこの点については割愛しておきたい。

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今回検証した製品はSamsung BダイDDR5-4800 16Gb DRAM「K4RAH086VB-BCQK」が搭載されていた。
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モジュールに実装されたPMIC周り、このユニットの実装で安定性向上とのトレードオフで電源オフ後の抜き差し時に放電処理などケアが必要になった。
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JEDEC準拠のブラックPCBを採用、黒色系が主体のゲーミングマザーボードやクーラーなどとのカラーコーディネートには適している。

少し話がそれてしまったが、JEDEC DDR5-5600対応のメーカー純正モジュールや、ネイティブDDR5-5600 DRAM搭載のSPD動作対応品が今後出回り始め、新世代プロセッサーでパソコンを自作する際の選択肢の一つになる事を踏まえ、とりあえず同製品を用いてAMD Ryzen 7000でちゃんと使えるのか?どんな感じ認識するのか?など気になる点のみ最小限検証を行ってみた。

検証環境

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AMD Ryzen9 7950XとASRock X670E PG Lightningを用いて認識周りをチェックしてみた。

■テスト環境

  • プロセッサー:AMD Ryzen 9 7950X
  • メインボード: Asrock X670E PG Lightning (BIOS:1.03)
  • メモリー:A-DATA AD5U560016G-DT DDR5-5600 16GBx2を1セットもしくは2セット使用
  • グラフィックス:CPU内臓機能を使用
  • 平置き(ケース組込み無し)

試してみたのはまずJEDECメモリー最大のセールスポイントである、挿して起動するだけで設定は何も行わない「SPD自動認識モード(AUTO by SPD)」での起動、負荷テストを2枚挿し、4枚挿しの2パターンと、今回より追加されていた「パフォーマンスリカバリーモード(by Profile)」で2枚、4枚挿し時の計4パターンで結果はそれぞれ下記の通りとなった。

Ryzen 7000 2枚差し SPD

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「SPD自動認識モード(AUTO by SPD)」にて1Rank 16GBモジュールを2枚(1セット)を挿入し起動した結果はこちら

  • 2枚挿し 定格(AUTO by SPD)
  • メモリ認識:DDR5-5200 5200MHz
  • メモリ電圧:1.1Volt
  • タイミング:42-42-42-84

負荷テスト

  • Prime:12時間 Pass(メモリーへのエアフロー無し、部屋内A/C 27℃)

Ryzen 7000 4枚差し SPD

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「SPD自動認識モード(AUTO by SPD)」にて1Rank 16GBモジュールを4枚(2セット)を挿入し起動した結果はこちら

  • 4枚挿し:定格(AUTO by SPD)
  • メモリ認識:DDR5-3600 3600MHz
  • メモリ電圧:1.1Volt
  • タイミング: 30-29-29-58

負荷テスト

  • Prime:12時間 Pass(メモリーへのエアフロー無し、部屋内A/C 27℃)

Ryzen 7000 2枚差し パフォーマンスリカバリー モード by Profile

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「Profile」に設定し1Rank 16GBモジュールを2枚(1セット)を挿入し再起動した結果はこちら

  • 2枚挿し:パフォーマンスリカバリー モード by Profile(DDR5-5600 44-44-44-90)
  • メモリ速度:DDR5 5600MHz
  • メモリ電圧: 1.2Volt
  • タイミング: 44-44-44-90

負荷テスト

  • Prime:12時間 Pass(メモリーへのエアフロー無し、部屋内A/C 27℃)

Ryzen 7000 4枚差し パフォーマンスリカバリー モード by Profile

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「Profile」に設定し1Rank 16GBモジュールを4枚(2セット)を挿入し再起動した結果はこちら

  • 4枚挿し:パフォーマンスリカバリー モード by Profile(DDR5-5600 44-44-44-90)
  • メモリ速度:DDR5 5600MHz
  • メモリ電圧:1.2Volt
  • タイミング: 44-44-44-90

負荷テスト

  • Prime:12時間 Pass(メモリーへのエアフロー無し、部屋内A/C 27℃)

検証結果

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AMD Ryzen 7000シリーズで使用した場合、SPD起動(初期設定)ではAMDが公表する仕様通り2枚2RankでDDR5-5200、4枚4RankでDDR5-3600として起動。 ベンチマークアプリによる負荷動作テストも問題なくパスする事ができた。

今回搭載されているDRAMの特性が良いのもあるかもしれないが本製品はDDR5-5600にて選別されたものなので当然メモリー的には余裕がある動作な側面もあるだろう。

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今回追加されていたProfileという名のプロファイル(設定項目)(ややこしい)を用いてテストも行ってみている。 これは最近実装され始めたSPD以上XMP未満の拡張プロファイルともいえるもので、従来SPD対応(XMP/EXPO非対応)メモリでメモリーコントローラーの制限を受けずにDRAMの能力を最大限引き出したい場合、手動で速度やレーテンシなどの設定をする必要があったが、この項目を選択することで少なくともRyzen 7000シリーズ環境においても2枚、4枚差しのいずれもDDR5-5600として認識し負荷テストも問題なくパスすることが出来た。

ただし電圧は+0.1Volt昇圧された1.2Volt設定に自動で変更されていたりレーテンシも微妙に切り詰められているなど、SPDとは違う値で調整されていたことから必ずしも定格で調整されるとは限らない側面もあるが、定格系JEDEC SPDメモリーの性能の最大限引き上げる「パフォーマンスリカバリー」要素のある新しいプロファイルとして今後普及、浸透していくのではないかと推察している。※

※2022年10月6日現在、JEDEC DDR5-5600の準拠の正式仕様版が入手出来ていない為、現在暫定呼称などを用いて記載しています。

まとめ

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■「ADATA AD5U560016G-DT」を箇条書きでまとめると。

  • AMD Ryzen 7000環境の場合、SPD設定であればメモリーを挿すだけで仕様通り1Rankモジュール2枚でDDR5-5200、4枚でDDR5-3600として認識、動作できる。
  • AMD Ryzen 7000環境の場合、新たに実装されたProfile設定を行えばメモリーやプロセッサーの個体差によるが2枚、4枚挿し時いずれもDDR5-5600動作は可能、ただし+0.1Volt前後昇圧される(定格電圧動作ではなくなる)。
  • Intel 12th 13th Coreプロセッサー+DDR5マザー環境の場合、SPD読みでDDR5-5600認識、動作が可能。
  • 今回の検証個体はSamsung 16Gb(2Gbx8)のBダイだったがBOM固定されていない製品の為、製造毎にDRAMは変わる。
  • DDR5-5600動作はモジュールベンダーであるADATA独自の選別テストによるもので一般的にいうネイティブ DDR5 5600MHz DRAMではないが、モジュールベンダーによる限定ライフタイム保証が付帯する。

結論として「AD5U560016G-DT」はDDR5-5600 JEDEC準拠モジュールとして使用出来る様、ADATAによる1.1Volt DDR5-5600MHz選別を行ったDRAMを搭載し検査したネイティブJEDEC DDR5-5600「仕様適合品」である。 ただし現時点でローコスト化部材が開発されていないDDR5においてモジュールやその実装部品のクオリティは高くメーカー純正品と相違ないレベルである事から、本製品の是非は「搭載しているDRAM次第」となる。 つまりおみくじ要素は残るもADATAというブランドへのトラストがあれば有りという理屈で考えてよさそうだ。※

実際にテストした結果として、AMD Ryzen7000環境、今回はX670Eチップセット搭載マザーボードで検証しているがX670/B650/B650Eもメモリー回りは基本的に同仕様なので同様に動作するはず、またintel DDR5環境においてJEDEC 準拠のDDR5-5600としての仕様通り認識、動作を確認する事が出来ており、JEDEC準拠仕様による汎用性の高さとADATAの保証も付帯している事も踏まえ、最終的に価格面で折り合いがつけば選択肢に入れてみては如何だろうか。

 
メーカーADATA
メモリー対応タイプデスクトップPC用
メモリータイプ288Pin DDR5-UDIMM
バッファー エラー検出機能(ECC)Unbuffered non-ECC
メモリープロファイルタイプSPD
SPD メモリー速度DDR5-5600/PC5-44800
SPD レイテンシー / 電圧CL46-45-45@1.1Volt
合計メモリー容量32GB
容量構成16GBモジュール x2枚セット
マルチチャンネル対応デュアルチャンネル
RANK数(1枚辺り)1RANK
チップ数 / チップタイプ8チップ / 16Gb DRAM (2048Mx8)
ヒートスプレッダー / カラー非搭載
発光ユニット / LEDカラー非搭載
モジュールタイプJEDEC準拠
モジュールカラー黒(ブラック)
PBフリー / RoHS指令準拠対応 / 対応
保証期間限定ライフタイム保証
発売日2022-09-10

クーポン対象

AMDやIntel DDR5 デスクトップ向け汎用JEDEC準拠の288Pin U-DIMM non-ECC DDR5 5600MT/s(PC5-44800)CL46 定格電圧1.1Volt SPD動作タイプ16GBモジュール2枚組 32GBメモリーキット。
AD5U560016G-DT
税込価格: 26,800円

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ADATA Technology社は、2001年に台湾で設立されたメーカーです。ビジネスは社会の礎であることを信条とし、持続可能な企業の構築が社会に対するコミットメントであり、テクノロジーの限界の打破を目指すとともに、社会への還元と環境への配慮を優先して開発・製造を行っています。

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ライター

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編集部 アーク石井

パソコンSHOPアークにてPC用メモリーバイヤー兼、管理職も勤める。 スキーとギターをこよなく愛す。アキバ歴23年を活かしたショップ視点でのメモリー関連の記事を主に担当している。